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 椅子が倒されて、ライトがつく。
「麻酔効いてるか確認するので、大きく開けてください」
 鹿野先輩の手には、風をかける機械。
 ゆっくり口を開けると、端から指が入ってきて内頬が押され、風をかける道具が右下の奥歯に向けられた。シュッと音がして反射的に体が跳ねてしまったけど、痛みはない。
「沁みましたか」
「いえ」
「じゃあこのまま削っていきますね」
 指で内頬を押さえられたまま、機械を持ち替える音を聞く。左からは水を吸う機械も近づいてきて音を立て始めた。
「痛いときは教えてください」
 久々に聞く、お決まりの台詞。近づいてくる甲高い音に目を閉じる。
「ゴトゴトしますよ」
 鹿野先輩のそんな言葉の直後、機械の先が歯に触れて強い振動が伝わってきた。
 よかった、痛くない。
 右下の歯には勢いよく水がかかっているけど、それも沁みない。このまま痛くありませんように、と願いながらお腹の上に置いた手にぎゅっと力を込めた。