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 レントゲンを撮り、診療台に戻る。今泉先生は少し遅れて、器具を準備してから診療室に入ってきた。
「診せてくださいね」
 診療台が倒され、ライトがつく。
 今泉先生に促されて口を開けると、ミラーが入ってきて右頬の内側を広げられた。今泉先生が俺の口の中を覗き込む。
「これは……痛かったと思います。先に麻酔しましょうね」
 頬を指で引っ張られ、シリンジを持った今泉先生の手が口元に近づく。まもなく微かな痛みを感じた。
「ごめんね」
 顔を顰めてしまったのか、今泉先生が耳元で謝る。子どもを宥めるような口調に胸の辺りがざわざわとした。
「うがいしてくださいね」
 何本か麻酔を打たれた後、ライトが消えて診療台が起き上がる。右側は早くも痺れ始めていた。久しぶりということもあり、うがいをするのがとても難しい。
 時間がかかってしまったせいか、後ろから今泉先生に声をかけられた。
「気分は悪くないですか?」
「ん……それは大丈夫なんですけど」
 振り返った俺の顔を見て、今泉先生はブラケットテーブル上の缶からガーゼを取り出す。
「水がついていますよ」
 口元を拭かれ、顔が熱くなった。
「じ、自分で! やります」
 コップの横に置いてあるティッシュに手を伸ばす。
「遠慮しなくていいんですよ?」
「してません……!」
 急いで拭き終わり、ティッシュをゴミ箱に捨てた。