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 部屋に戻り、ベッドに横になって痛みが消えるのを待ってみる。だが、いくらか軽くはなったものの鈍い痛みは残り続けた。鎮痛剤を求めて起き上がり、ラックに置いてある箱を漁る。
「ない……」
 胃腸薬や風邪薬はあるのに肝心の鎮痛剤が見当たらない。手を止めて思い返すと、数週間前、頭痛がしたときに飲んだあれが最後の1錠だったように思う。どうして早く買っておかなかったのだろう。今から買いに行くしかない。ダウンを羽織り、外へ出た。
 夜更けの町に人通りはない。数百メートル先の国道を走る車の音を聞きながら、淡い橙色の街灯と点滅する赤信号の下、一歩ずつ足を進める。冷気にさらされ鼻先や耳が次第に痛くなってきた。
 ドラッグストアの看板が見えた、その時。ぽつりと頭上になにかが落ちてきた。見上げると額や頰に冷たい雨粒が当たった。
 雨の予報は出ていなかったはずなのに。絵に描いたような運の悪い人間だ、そんなことを思って青黒い空が滲んだ。ゆっくりと顔を前に向ける。頰を伝ったのは雨なのか涙なのかわからない。ドラッグストアまで走る気にはなれず、すぐ近くのビルの1階部分が駐車場になっていたのでそこに入りこんだ。
 雨粒を払うように頭を振るとコンクリートの床に黒い染みが落ちた。かじかんだ手でダウンの胸元を合わせてしゃがみこみ、雨が打ちつける音を聞きながら目を閉じる。次第に水中に潜ったように雨音の輪郭はぼやけ、意識が遠のくのを感じた。