またあの日の夢を見た。歯が痛くなってから何度も見た夢。
「大きな虫歯にしちゃったんだから我慢しないと」
俺は診療台の上で顔や体を先生たちに押さえつけられている。口を閉じないよう器具で固定され、他にもたくさんの器具が押し込まれた。歯を削る音が鳴り始め、痛み、振動、金属と薬の味、俺を叱りつける声、眩しいライト、全部が怖くて不快で、何も考えられなくなっていく。誰か助けて、と言いたいはずなのに、口から出せたのは言葉を覚える前の子どもみたいな声だけ。
いつもなら、この自分の声で目を覚ましていた。
でも今日は違った。温かい手が足に触れた。
腕や肩を押さえているのとは違う、優しい手。ゆっくりと足を撫でられ、意識が少しそちらに向く。痛みや恐怖に溺れそうになっていた俺を引き上げてくれたその感覚に必死にしがみついた。
目覚めは、あの夢を見たにしては悪くなかった。薄暮の室内にスープの匂いが漂っている。タオルケットの上から足に触れてみると、ぬくもりが残っている気がした。
今まで記憶になかった手。あのとき実際にあったことを思い出したのか、俺が作り出した単なる夢なのか、わからない。でも夢にしては不思議なほど現実味があった。