*おまけ
根治が終わり、匡一の左上6番に梅村の作ったクラウンが入った後のこと。
とある日の診療が終わった後、匡一に手を合わせる皓大の姿があった。
「匡ちゃんお願い。スケーリング教えて」
「いいけど、皓大だってできるでしょ?」
「一応はね? でも匡ちゃんになるべく快適なスケーリングを提供したく!」
「快適って……別にいいよそんな。普通にやってくれれば」
「いや俺たぶん普通未満なんだよ〜」
近々スケーリングをしてくれるよう匡一は皓大に頼んでいた。最初は検診だけ頼むつもりだったが、他の人に口内を見られるよりはとスケーリングまで頼んだ。了承しつつも皓大があまり乗り気でないように見えたのは、どうやら自信がなかったようだ。
とはいえ皓大のことだから言うほど酷くはないのではと思ってしまう。一度してもらって様子を見ればいいだろう。皓大にもそう伝えようとしていた匡一の隣に梅村が近づいてきた。
「匡一さん、坂梨先生にスケーリング教えたほうがいいよ」
「え」
「はっきり言って、下手」
梅村が皓大を指差す。
「匡一さんにしてもらった後だったから余計そう感じたのかもだけど」
「梅村くん皓大にもスケーリングしてもらったの?」
数週間前に匡一は梅村のスケーリングをしたばかりだった。
「うん。匡一さんにする前に俺にやってみて、大丈夫か聞きたいって言われて」
「そしたら大丈夫じゃないって……」
皓大が肩を落とす。
そこへ歯科助手が通りかかった。
「あ、坂梨先生。明日のアポのことでちょっといいですか?」
「はーい。じゃあ匡ちゃん、今度教えてね」
匡一の返事を待たず、皓大は歯科助手と一緒に受付のほうへ行ってしまった。その背中を見ながら梅村が苦笑する。
「相変わらず気ままだね。すっかり元気そうでよかったけど」
「ごめんね、心配かけて」
「仲直りしたんならいいよ。匡一さんも調子はいい?」
「うん」
匡一は大きく頷き、左頬に手を当てた。
「梅村くんと皓大のおかげで美味しくごはんを食べられてるよ」
「よかった。……ありがと。俺にも声かけてくれて」
「こちらこそ。俺たちの信頼する技工士さんが引き受けてくれて嬉しかったよ」
梅村は耳を赤くして俯き、どーも、と小さな声で言った。