雪野は嘔吐反射があるらしく印象を取るのも大変そうで、頑張れ、なんてうっかり応援してしまった。
そうしてなんとか今日の処置は完了した。
「お疲れ様、雪野」
豊間が雪野のエプロンを外す。
「頑張ったね」
「……ありがと」
ユニットに座ったまま、雪野は豊間を見上げた。
やれやれ。片付けくらいは全部やらせよう。
お疲れー、と言って診療室を出ていこうとすると、くっと服の裾が引っ張られた。振り返ると雪野だ。
「大平さんも……ありがとう、ございました」
「お、おう」
こういうところが憎めないんだよな、と思った次の瞬間。
「ただ今日の記憶は忘れて。全部」
必死な目で迫られたが、まだ赤い目では全く怖くなかった。