翌日の昼休み、スタッフルームに入ると雪野がこちらに背を向け一人で座っていた。両肘でテーブルに頬杖をつき、何やらぶつぶつと呟いている。近づいても僕に気づく様子はなく、声がしっかりと聞こえてきた。
「……嫌われちゃったかなぁ」
「誰に?」
隣の椅子を引くと、「うわぁあ」と椅子をガタガタ言わせながら雪野が立ち上がった。
しかし僕の顔を認めると途端に膨れっ面をして椅子に腰を下ろす。
「大平さんびっくりさせないでください」
「雪野が驚きすぎだろ」
「……だって、豊間かと思って」
雪野の前には開けていない弁当が置いてある。食事もせずに思い悩んでいたようだ。
「豊間に嫌われたかもって心配してんの?」
雪野が黙って頷く。
「昨日は早く治療しなきゃって思っていろいろやっちゃったけど、あとで考えたら俺怖かったかもって……」
「うん、すげー怖かったよ」
「やっぱり……!」
「だから落ち着けって言ったのに」
「豊間、どう思ったかな……今日もあんまり話せてないし……」
「大丈夫じゃない?」
あいつも嫌われたかもと心配していたくらいだから。でも僕からそれを言うのは違う気がするので、あとはもうすぐやってくるだろう本人に任せたい。
「お疲れ様です」
噂をすれば、後ろからドアの開く音とともに豊間の声がした。
「じゃ、僕は外に食べに行ってくる」
「え、大平さん待って」
引き留めようとする雪野の言葉は聞こえなかったふりをして、豊間に今まで座っていた席を勧める。
「豊間お疲れ。ここ座って」
「はい……?」
「じゃあね」
スタッフルームを出る間際、後ろで二人がぽつぽつと話し始めたのが聞こえた。
そして外食を済ませて戻ってくると、受付の中には作業をしながら笑い合う雪野と豊間がいた。