「俺はどうすればいいんだろうな、柊崎」
湯気の立たなくなったスープを口に運びながら浅賀が尋ねる。
治療するしかないんじゃないですか、と柊崎がそっけなく言うと浅賀はぎょっとした様子で隣を見た。
「お前までそういうことを言うか?」
「歯医者としての正解はこれかと」
「そういうことは訊いてない。柊崎としてはどうなんだ」
柊崎として。大量の虫歯を放置し続けた過去のある同類としての意見を求められているらしい。なかなかに失礼な扱いだとは思いつつも事実に違いはないし浅賀の気持ちも理解できる。柊崎は複雑な思いで率直な回答を述べた。
「俺だったら……なんとかやり過ごしますね、夏休みが終わるまで」
「それしかないよな……」
「夏休み、あと1ヶ月くらいですよね。ということはその後輩に会うのはあと4、5回ってことです」
淡々と説明する柊崎にまあそうだな、と浅賀は相槌を打つ。
「逃げきれるんじゃないですか」
「……そうだな。それくらいならなんとかなるか」
「捕まるときは捕まりますけどね」
俺みたいに、と柊崎は心の中で付け加えた。
不穏なことを言うなと笑った浅賀。彼が西矢に捕まるのはもう少し先の話になる。