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 最低だ、私は。
 みんなの話題は仕事のことに変わり、盛り上がっている。私は適当に相槌を打ちながら味のしなくなったお酒と料理を口に運んでいた。
 薫は私が振ったことをもう気にしていないと言っていたけど、あのとき告白してくれた気持ちは本気だったはずだ。その気持ちを、さっき私はなかったことにした。
 みんなの前で本当のことは話せなかったかもしれない。でも先輩の質問に答える資格があるのは薫だけだったのに。
 悶々としながら咀嚼を続けるうちに私は歯のことをすっかり忘れていた。

「ん」

 歯に当たった、食べ物とは違う感触。
 薬臭いような味もして思わず口元を押さえる。
 なるべく使わないようにしていた治療中の歯で思いっきり噛んでしまったことに気づいたけどもう遅い。

「柾?」

 薫がこちらを覗き込んでくる。
 ちょっとお手洗い、そう言って薫から逃げるように立ち上がった。