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 朝のミーティングが終わったあと、後ろから肩を叩かれた。振り向くと薫が立っている。

「今日の診療後、時間ある?」
「なんで」
「なんでじゃないだろ。そろそろ治療の続きしたいんだけど」

 薫に左下6番の抜髄をしてもらってから約1週間。最初の数日は痛みがあったけど薫が届けてくれた鎮痛剤で凌いで、今はもう痛みはなくなっていた。2回目の治療をするにはいい頃合いだ。
 でも今日は予定がある。薫にそれを話そうとしていると、衛生士の先輩が携帯を片手に近づいてきた。

「佳凛、今夜行けるんだよねー?」
「あ、はい」
「オッケー。なんか店から人数の確認来ててさぁ」

 薫が私と先輩を交互に見て、店?と尋ねる。

「ごめん。今日女子で飲み会する予定で」
「そっか。じゃあ明日……は休みだな。治療は月曜日にするか」
「ごめんね」
「俺はいいんだけど。でもお前大丈夫なの? その歯で……てっ! 何すんだよ」

 先輩の前で余計なことを言うんじゃない。薫の足を軽く蹴る。
 そんな私たちの様子を先輩はにやにやと見ていたかと思えば薫に尋ねた。

「周藤先生も来ませんか?」

 え、と私たちの声が重なる。

「実は助手の子が二人来れなくなっちゃって。どうですか、周藤先生とあと一人くらいドクター誘って」

 衛生士の同僚たちはなぜか薫と私の仲を取り持とうとしている。いつだったか、飲み会計画しちゃう?と誰かが言っていた記憶もある。
 このまま薫も飲み会に来たらきっとそういう話題が出る。それは絶対に嫌だ。薫だって気まずいだろう。

「先輩、今日は女子会のはずじゃ」
「いいじゃん。店も急に人数減るよりいいと思うし。ね、周藤先生」

 薫がちらっと私のほうを見る。来ないで、という気持ちを込めて見つめていると薫はふっと笑って先輩に答えた。

「わかりました。もう一人声かけてみます」

 伝わらなかった……。
 先輩も私に向かって親指を立てているけど、私は望んでないんですって。

 女子会楽しみにしてたんだけどな。気が重いまま診療の準備に取りかかった。