(風見Side)
和瑚ちゃんが無理しているのは分かりやすく見て取れたけど、頑張ると言い張っているのを止めるのもかえって悪い気がして、俺たちは治療を再開することにした。
再び無影灯を点けると、みるみるうちに和瑚ちゃんの目に涙が盛り上がった。
それに気づいた夏くんが声をかける。
「大丈夫か? もう少し休憩していいんだよ」
ふるふると和瑚ちゃんが首を振る。
夏くんはしばらく迷っているみたいだったけれど、心配そうな表情のまま、ファイルを手に取った。
「ん、じゃあ、あーん」
夏くんの指がそっと唇に触れると、ぴくんと肩が跳ねる。
それでも和瑚ちゃんは唇を震わせながら小さく口を開けた。
「偉いなぁ。もう少しあーん、できるかな」
「大丈夫だよー」
和瑚ちゃんはちょっとずつ口を大きく開けようとしてくれたけれど、だんだんしゃくりあげる声が漏れ出す。
「怖いよな。ちょっと待とうか、な」
夏くんが唇に触れていた手を離すと、和瑚ちゃんはいよいよ泣き出してしまった。
「うっ、ひっく、んぅ……っ」
「……和瑚ちゃん、椅子起こそうな?」
仰向けになったまま顔を覆って泣いている彼女を見かねて、夏くんがユニットを起こす。
ユニットが起き上がっても、和瑚ちゃんの涙は止まらなかった。
「ごめんなさい……っ」
タオルを目元に当てながら涙まじりに謝る姿はとても痛々しくて、胸が締め付けられた。
夏くんも辛そうな表情をしながら和瑚ちゃんの背中をさする。
「いいからいいから。わがまま言うくらいでいいって、最初から言ってるだろ?」
「ちょっと無理しちゃったね。大丈夫だよ、焦らなくて」
二人で声をかけるけど、和瑚ちゃんは苦しそうに泣き声を押し殺そうとしていた。