(和瑚Side)
「全部終わったよ、お疲れ様」
椅子が起こされて、芳野先生がエプロンを外してくれる。
私の顔を覗き込んだ先生の額には、うっすら汗が浮かんでいた。
「よく頑張ったな」と先生がマスクを外して笑いかけてくれて、それを見たらふっと気が抜けて涙が溢れ出した。
「もう大丈夫だから、そんなに泣くなよ」
芳野先生は困ったように言いながら、また背中をさすってくれる。風見先生は何も言わず、ずっとそばにいてくれた。
しばらくして涙が落ち着いてから、私は二人の先生を順番に見上げる。
「芳野先生、風見先生、ありがとうございました。……あと、迷惑かけて――」
ごめんなさい。
そう言おうとしたら、風見先生が私の言葉に被せるように、
「お腹すいたねー」
と突然緊張感のない口調で話し始めた。
「風見、和瑚ちゃんがありがとうって言ってくれてるのに、なんだよいきなり」
「だって、ほっとしたらお腹すいてきちゃった」
「お前なあ……」
「和瑚ちゃんは今日の晩ご飯何かな?」
「聞けよ」
「あ、右ではあんまり噛まないようにね」
絶対、風見先生わざとやってるけど。
言わなくていいよ、って言ってくれてるのかな。
都合よく解釈して、私は「ごめんなさい」の言葉を呑み込んだ。