「はい、あーん」
夏くんに開口を促されて、和瑚ちゃんは今度はしっかりと口を開ける。
バキュームを口の中に入れると、和瑚ちゃんがそっと目を閉じた。
根管内の清掃を続ける間、和瑚ちゃんは少し声を漏らしつつも泣かずに頑張っていたけど、だんだんと口は小さくなっていった。
夏くんが3本目のファイルを取って、和瑚ちゃんに声をかける。
「これで最後だからな、もうちょっとだけお口開けててなー」
本当は口を閉じたくてたまらないだろうに、夏くんに渡されたタオルを握りしめながら、和瑚ちゃんは自力で大きく口を開けてくれた。
「和瑚ちゃん偉いなあ。綺麗にしてもらおうね」
二人で声をかけ続け、それからしばらくして夏くんがファイルを引き抜いたのを見届けて俺もバキュームを口の外に出す。
「和瑚ちゃん、お掃除終わったからな? あとはお薬詰めて、おしまいな」
「終わりだって! 頑張ったね」
和瑚ちゃんがゆっくりと目を開ける。
「ほんと……?」
「あ、また信じてないなー」と夏くんが拗ねたように言って、和瑚ちゃんは潤んだ目をふにゃっと細めた。