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 仕事が終わり自宅のマンションに帰り着くと、集合ポストの前で小宮山くんとばったり出くわした。
「あ」
「こんばんはー」
 小宮山くんの手には見覚えのあるはがき。うちから送った定期検診のお知らせだ。
「それ届いてたん——あ、ちょっと」
 僕が言い終わらないうちに小宮山くんははがきをコートのポケットに突っ込み、階段のほうへ歩き出す。慌てて追いかけた。
「来月さ、そろそろ検診どうかな?」
「わかってるよ、こんなの送ってこなくても」
「ごめんごめん。患者さんみんなに送ってるんだ」
「別にいいけど。ちゃんと予約するから追いかけてこないで」
「僕も家こっちだから許してください」
 そんなやりとりをしながら階段を上り、あっという間に僕の部屋がある2階に着く。僕には目もくれず階段を上っていく小宮山くんに声をかけた。
「おやすみ。連絡待ってるからね」
 ぴたりと小宮山くんの足が止まる。振り向き、僕を見下ろした小宮山くんの表情はなんだか挑発的に見えた。
「俺も、待ってるからね」
「え?」
「明日、何日か覚えてないとは言わせないよ」
「え、えっと、にじゅう……ご……」
 やばい家賃だ。すっかり忘れてた。
「忘れてたよね?」
「うっ……待って1ヶ月早すぎない!?」
「時間は待ってくれないよ」
「すみません明日、朝、郵便局寄って行くので」
 小宮山くんが呆れた表情になる。
「前から気になってたんだけど、春田先生そんな忘れっぽくて自分の検診は忘れず行ってるの?」
「えっ……い、行ってるよ!」
「なんか怪しい」
「行ってるからね! 僕も来月検診」