日曜日のヘアサロンは朝から全ての席が埋まっている。
自分が今日最初に担当するのは、早瀬夕椰さん。家でも丁寧にヘアケアをして、いろんな髪色や髪型を楽しんでいるお客様だ。
「カラーの色味、変えてもいい?」
「どんなの?」
「ミルクティー系とかどう? 明るめにしたいんだけど。こんな感じ」
SNSに載せた写真をスマホで見せる。
「いいねー。依さんに担当してもらうようになってすぐの頃も勧めてくれなかった? たしか職場で怒られるかもって断っちゃった気がする」
「それ! 覚えてたんだ」
夕椰さんが覚えているとは思っていなかったから、つい大きい声が出てしまった。
初来店時から定期的にカラーをしている夕椰さんだけど、最初の1年くらいは仕事の都合と言ってずっと落ち着いた色だった。
「最近はだいぶ明るくしてるから、もう仕事もOKなのかと思って」
「大丈夫だと思う。あの頃は新人でさ、加減が分からなかったんだよね」
「あー、そういうのあるよね。先輩の様子見つつちょっとずつ遊ぶみたいな」
「そうそう」
カラーを決めて、他にもトリートメントやカットの希望、スタイリングの悩みなどを聞いてカウンセリングは終わりだ。
「じゃあかっこよくするんで! 途中で気になったことがあったらいつでも言ってね」
「うん、お願いしまーす」
鏡越しに目を合わせ、夕椰さんが微笑んだ。