落書きまとめ - 5/11

*『笑い話』の早瀬視点

 何度もエキスカで削られるうちに、少しずつ痛みが強くなっていく。
 痛いけど、まだ大丈夫。まだ我慢できる……もうあの頃みたいな子どもじゃないんだし、歯が痛いのだって今までいっぱい我慢してきたじゃん。それに俺が悪いんだから我慢……しないと。
 大丈夫。恐怖心を振り払うようにまた自分に言い聞かせたとき、カリッとエキスカで掻かれた場所に一段と激しい痛みが走った。危うく口を閉じそうになったのを堪える。スクラブを掴んだ手にぎゅっと力が入る。体じゅうに嫌な汗が噴き出した。
 怖い……。これ以上痛みが続くのも、この後もっと痛いことが待っているかもしれないのも、こわい、もうむり……一気に弱音に支配されそうになる。目の奥が熱くなっていった。 
 俺、こんなはずじゃないのに。このまま涙が溜まって、目を開けたら涙が零れたなんてことには絶対なりたくない。
 強がるようにぱっと目を開けた瞬間、柊崎の顔が目に映った。目元しか見えないけど、険しい視線でもなければ優しい眼差しというわけでもない。ただ淡々と、でも真剣に患歯を見つめるいつもの柊崎がそこにいた。
(ほんっと、無表情)
 気を紛らせようとそんなことを考えてみると、不思議なくらい気持ちが落ち着いてくるのがわかった。
「どうした」
 俺の視線に気づいたのか、柊崎が尋ねてくる。気づいてくれたのは少し嬉しかったけど、声をかけられたのはびっくりした。ちょっと前の柊崎なら気づいても声はかけなかったと思う。
「痛むのか」
「……ちょっと」
 本当はかなり痛かったけど、今ならもう少し我慢できる気もした。