落書きまとめ2 - 3/3

*似たもの同士 バレンタイン編

 バレンタイン直前に問題発生。3番と4番の隣接面に入っていたCRが取れて沁みる。恋人の沙良からは例年通りバレンタインの日にデートに誘われているので、チョコを準備してくれているのだと思う。それを歯が沁みて十分に楽しめないなんて、沙良のためにも自分のためにも絶対に嫌だった。
 となれば、するべきことは一つだけ。俺にしてはかなり早く行動を起こした。
「千秋先生、おはようございます」
 診療開始前、カルテのチェックをしている千秋先生に近づいた。先生はこちらに顔を向け、笑みを浮かべる。
「おはようございます」
「……あの」
「どうしたの?」
 先生は穏やかな笑顔のまま俺を見ている。初めて治療を頼んだときのことが思い出された。……この顔にすっかり騙されてしまったことも。
「お願いがあるんですが」
 ああ、と千秋先生が笑みを深めた。
「治療かな?」
「……」
「ん?」
「…………っす」
「なに?」
「そうです!」
「元気がいいねぇ。わかりました。もうすぐバレンタインだもんね」
 はぁ〜?
 なーにが「もうすぐバレンタインだもんね」だよ!
 なんでわかんだよ、わかってもわざわざ言わなくていいだろ!!
 くっそ腹立つ!!!
 心の中で気が済むまで地団駄を踏んでから、千秋先生を真似て笑顔を作る。
「お願いします」
「昼休みはランチの約束してるから、帰る前でいい?」
「もちろんです」
「じゃあまた声かけるね」
 千秋先生は軽く手を振り、去っていった。
 治療のことを考えると気は重いが、まずは一仕事終えた気分だ。しばらく自分のことは忘れて本業のほうに取りかかるとしよう。
 まずはパソコンで今日の予約を確認する。
 昨日ざっと確認済ではあったが、1件予約が増えていた。氏名は武石……
「沙良!?」
 思わず口に出してしまった。近くに来ていた助手の子が「どうしたんですか!?」と驚いたように訊く。
「あっ、いやなんでも」
 沙良だよな?
 定検はまだ先なのにどうして、と予約のデータを確認すると、詰め物が取れたとのこと。
 いやいやいや。なんなの俺ら。