落ち着かない。
診察室からはタービンの音と、尚の泣き声、結斗がそれを宥める声が聞こえてくる。
待合室で携帯でも見て時間を潰そうかと思っていた俺は結局それどころではなくなり、携帯をポケットにしまった。
様子が見えるわけでもないのにちらちらと診察室のほうを見てしまう。
やっぱり付いていてやればよかった。
(頑張れ、尚)
心の中で呟く。
しばらくすると、機械音が止んだ。思ったより早かったなと不思議に思いながら腰を浮かせると、診察室から結斗が出てきた。
「衛、ちょっといい?」
「ああ、終わったのか?」
「いや……」
結斗は苦い表情をしていた。
「炎症がひどいみたいで、あんまり麻酔が効かなくて」
「ああ……辛そうなのが聞こえてきてた」
「うん、結構痛みが強そうでさ。それで衛にお願いなんだけど」
その“お願い”の内容はあまり気の進まないものだった。
「抑制してほしい?」
「うん。……可哀想だとは思う。衛にもそんなことさせて申し訳ない。でも、怪我させないためにも協力してくれないかな」
結斗の表情から、それが苦渋の決断であることは伝わってきた。それでも返答に困っている俺に結斗は続ける。
「手を握ってあげてて、危なそうなときだけ押さえてくれればいいから。それにお兄ちゃんいたほうが心強いと思うし」
「……分かった」
結斗は「ありがとう」と微笑んで、俺たちは二人で診察室へと向かった。