「麻酔効いてきたか確認しようかな」
もう一度椅子が倒されて、陽太がミラーを手に取った。
「開けてね、軽く叩くよ」
コンコン、とミラーで右下の奥歯が叩かれる。
「どうかな? 痺れてる感じする?」
「うん」
「よし、効いてるみたいだね」
陽太はミラーを置くと、代わりに歯を削る機械を手に持った。
いよいよだ……。お腹の上でぎゅっと手を握りしめる。
「じゃあ、削っていくね。こっちが歯を削る機械、こっちがお水とか唾を吸う機械ね。知ってると思うけど、いちおう」
両手に持った機械のことを丁寧に説明してくれた陽太に頷く。
「はい、それじゃあ大きく開けてねー」
陽太の言葉と同時に機械が甲高い音を立て始める。機械が口の中に入ってきて、右下で水しぶきがあがり出した。
やだ……やっぱり怖い……。ぎゅっと目を閉じて、握りしめた手にもますます力が入る。
「ふみー? 痛くないよ、大丈夫だから力抜いて」
機械音の向こうから陽太ののんびりとした声が聞こえてくる。
力抜くの……どうするんだっけ……。
「ゆーっくりお鼻で呼吸しよっか。さっき深呼吸したでしょ? あんな感じだよ」
言われた通り、意識して鼻から息を大きく吸って、吐いてみる。
「うん、じょーず。それでね、もう少し大きく開けられるかな? そうそう、そのままだよー」
なんだか、子ども扱いされてるみたい。少し力が抜けてきて、ふとそんなことに気づく。
うっすら目を開けてみると、陽太がこちらに気づいて、一瞬ふっと目を細めた。
「よく頑張れてるよ、ふみ」
なんか恥ずかしいかも……。私は慌ててまた目を閉じた。