夜中に目が覚めると、右下の奥歯がツキツキと痛かった。枕元に置いてある携帯を確認すると朝の4時前。隣にいる陽太は静かに寝息を立てている。
やっぱりさっき痛いかもって思ったの、気のせいじゃなかったんだ……。
ごろんと寝返りを打つ。しばらくすれば治まるかな、と目を閉じて頬を押さえてじっとしていたけれど痛みが引く気配はない。
右下の奥歯、たしか虫歯だって言われてたところだ。早く治したほうがいいとは言われてたけど、こんなに早く痛み出すなんて……しかもせっかくのデートの日に。今日も二人で出かける予定なのに……。
痛いのと悲しいのとで涙が零れてしまって唇を噛みしめた。
「……ふみ?」
私を呼ぶ陽太の声がして、慌てて息を潜める。もし陽太に気づかれたら、治療しようって言われるかもしれない。体勢を変える余裕はなくて、右頬を押さえた格好のまま、寝たふりをしてごまかそうとした。
後ろで陽太が体を起こした気配がして、ぱっと部屋の電気がつく。陽太が私の顔を覗き込んできたのがわかった。
「え、ふみ、大丈夫?」
ゆさゆさと体を揺すられる。
寝たふりも限界で、目を開けるとぼやけた視界に陽太の顔が映った。
「ふみ、もしかして歯が痛い?」
頬を押さえて、体を丸めて、夜中に泣いている私。どう見ても歯が痛い人だ。陽太に言い当てられたのは当然だったけど、いきなりの問いかけに心臓が跳ねて、私は否定もできなかった。
陽太に、歯医者さんにばれちゃった。どうしよう、どうしよう……頭の中はそれでいっぱいでわけもわからず涙が溢れ出した。
「……ちょっと起きて?」
陽太に支えられて上半身を起こす。陽太はそっと背中をさすってくれた。
「大丈夫だよ、ふみ。だいぶ痛むかな?」
「……ん……痛いのも、だけど、……い、いろいろ……」
「ん、そっか。じゃあとりあえず痛み止め飲もうか。ね? ふみは自分の薬持ってる?」
「鞄に入ってる……」
「わかった。俺取ってきていいかな?」
私が頷くと、「ちょっと待っててね」と陽太は寝室を出ていった。