先生でしょ? - 6/12

 そのクリニックは、とあるビルの2階にあった。階段を上がるにつれて、心臓がどきどきしてくる。
 やだ……緊張する……。
 クリニックの入口までたどり着くと、ドアには『本日の診療は終了しました』の札。
 なんだ、やっぱり時間外じゃないの。
 そう思いながらも、ドアを押してみるとすんなりと開いた。
 入るとすぐ、無人の待合室。
 白っぽい、落ち着いた印象だけどおしゃれな雰囲気の空間で、アロマを焚いているのか歯医者らしい匂いはあまり感じられなかった。
 記憶の中にある歯医者とは少し違った様子の場所を見回していると、奥のほうから足音が近づいてきた。

「香椎先生、こんばんは」

 白衣を着た千秋さんだった。

「こんばんは。すみません、遅くに」
「いえ、僕のほうこそちょっと強引だったかもしれませんけど。……どうぞ、準備できてるので」

 え、もう?

 私の心の準備は全く整わないまま、私は千秋さんの後について診察室へ向かった。