名刺はそっと手帳に挟んだ。
連絡をする気は起きなくて、それからまたしばらく経った頃。
子どもたちと昼食のお弁当を食べていたとき、左上の歯に今までで一番強い痛みを感じた。
「ふ……うっ……」
慌ててお手洗いに駆け込む。
痛みの波が引くのを少し待ってから、恐る恐る鏡で左上の歯を確認した。
暗くてよく見えないけれど、詰め物が入っていた場所が黒っぽくなっていることくらいは分かった。
詰め物が取れただけじゃない。そんな気はしてたけど、虫歯……だよね。
「いったぁ……」
ずきずきと脈打つように痛む場所を押さえて、私はしゃがみこむ。
前にここが虫歯になったときもこんなには痛くなかった。
さすがに、これは歯医者さん行かなきゃ……。
こんなに痛いところを治すなんてどうなるんだろう、という思いも掠めたけれど、今はとにかくこの痛みを取りたいという気持ちが強かった。