先生でしょ? - 10/12

「はい、削るのおしまいです。よく頑張りましたね」

 千秋さんがタオルで涙を拭いてくれる。
 さっきまでの様子とは違う、私のよく知っている千秋さんの雰囲気に安心してまた涙が零れた。
 でも、次の言葉で背筋が凍りつく。

「落ち着いたら、続きやりましょう」
「え……?」

 終わりじゃないの?
 そういえば、まだ椅子も起こしてもらっていない。
 不安な気持ちで千秋さんを見上げると、「大丈夫ですよ」と彼が微笑む。

「歯の根っこの部分を綺麗にしていきます。もう機械も使いませんし、すぐ終わります」

 根っこの部分って、はじめに言ってた神経のこと? それ絶対痛いんじゃ……。
 さっきもあんなに痛かったのに、と思って体が震えそうになる。

「いろいろ考えても怖くなるだけですよ、早く終わらせちゃいましょうか」

 ふわりと笑った千秋さんに流されるようにして、私はうなずいてしまった。