「はい、削るのおしまいです。よく頑張りましたね」
千秋さんがタオルで涙を拭いてくれる。
さっきまでの様子とは違う、私のよく知っている千秋さんの雰囲気に安心してまた涙が零れた。
でも、次の言葉で背筋が凍りつく。
「落ち着いたら、続きやりましょう」
「え……?」
終わりじゃないの?
そういえば、まだ椅子も起こしてもらっていない。
不安な気持ちで千秋さんを見上げると、「大丈夫ですよ」と彼が微笑む。
「歯の根っこの部分を綺麗にしていきます。もう機械も使いませんし、すぐ終わります」
根っこの部分って、はじめに言ってた神経のこと? それ絶対痛いんじゃ……。
さっきもあんなに痛かったのに、と思って体が震えそうになる。
「いろいろ考えても怖くなるだけですよ、早く終わらせちゃいましょうか」
ふわりと笑った千秋さんに流されるようにして、私はうなずいてしまった。