その日は3回目のデートで、いつものように颯が車で迎えに来てくれて、今日は私が行ってみたかったカフェに昼食を食べに行った。
食事を楽しんでデザートのケーキを食べているときのこと、颯は面白い同僚の話を始めた。
彼の話を聞いて笑いながら、ふと颯の職業をまだ聞いていないことに私は気づく。最初に質問しそびれて以来、なかなか訊くタイミングがないままここまで来ていた。
本当ならデートを重ねる前に職業は知っておくべきだったのかもしれないけど、彼を私より前から知っているオーナー夫妻が口を揃えて好青年だと言うから油断していたし、自分の仕事を好きだと言った颯は素敵で、正直職業なんてなんでもいいような気がしていた。
でも、彼のことをもっと知りたい。
同僚の話が一段落したとき、私は尋ねた。
「颯は何のお仕事をしてるの?」
颯がコーヒーカップに口をつけたまま、あれ? と首を傾げる。
「言ってなかったっけ? 歯科医師だよ」
それはあまりにもあっさり告げられた。
思わず、口に運ぼうとしていたフォークを置く。
「……え?」
聞き間違いだ、きっと。
そう思いたかった。
でも颯はだめ押しのように言葉を重ねた。
「歯医者さんだよ」
はいしゃさん。
その単語が頭の中でぐるぐると渦巻いた。
うそ。なんで。颯が?
「……ごめん、ちょっとお手洗い行ってくる」
私は颯の顔を見ずに席を立った。