歯医者さんの彼女 - 4/8

 その日は3回目のデートで、いつものように颯が車で迎えに来てくれて、今日は私が行ってみたかったカフェに昼食を食べに行った。
 食事を楽しんでデザートのケーキを食べているときのこと、颯は面白い同僚の話を始めた。
 彼の話を聞いて笑いながら、ふと颯の職業をまだ聞いていないことに私は気づく。最初に質問しそびれて以来、なかなか訊くタイミングがないままここまで来ていた。
 本当ならデートを重ねる前に職業は知っておくべきだったのかもしれないけど、彼を私より前から知っているオーナー夫妻が口を揃えて好青年だと言うから油断していたし、自分の仕事を好きだと言った颯は素敵で、正直職業なんてなんでもいいような気がしていた。
 でも、彼のことをもっと知りたい。
 同僚の話が一段落したとき、私は尋ねた。

「颯は何のお仕事をしてるの?」

 颯がコーヒーカップに口をつけたまま、あれ? と首を傾げる。

「言ってなかったっけ? 歯科医師だよ」

 それはあまりにもあっさり告げられた。
 思わず、口に運ぼうとしていたフォークを置く。

「……え?」

 聞き間違いだ、きっと。
 そう思いたかった。
 でも颯はだめ押しのように言葉を重ねた。

「歯医者さんだよ」

 はいしゃさん。
 その単語が頭の中でぐるぐると渦巻いた。
 うそ。なんで。颯が?

「……ごめん、ちょっとお手洗い行ってくる」

 私は颯の顔を見ずに席を立った。