他の友達と別れて一馬と二人になると、おれはさっそく一馬に食ってかかった。
「なんで声かけたりするんだよ!」
「なんか面白そうだったから」
「お前……」
「というか理玖、夏己くんから逃げてるってことは歯医者さぼってるんでしょ」
やっぱり察しのいい幼なじみは嫌いだ。全然ありがたくなんかなかった。
「……そうだよ。まじ気まずかった」
「でも夏己くんなにも言わなかったね。よかったじゃん」
「よかったのかな……」
夏兄が一言もおれに声をかけないまま行ってしまって、ほっとしたのと同時になんだか寂しかった。
もしかして、おれが歯医者さぼってるから怒ってたりするんだろうか。お前なんかもう知らないって言いたいのか。さっき夏兄が歩いてくるのに気づいたときよりずっと大きな焦りに襲われる。
「おれに気づいてたよな?」
「うーん、気づいてたと思うけどね。あの距離じゃ」
「だよな……」
じゃあやっぱり、気づいてておれのこと無視したってことだよな……。その事実が重くのしかかってくる。
「まあそろそろ歯医者行きなよ。夏己くんのことだからそんな怒ったりはしないって、きっと」
「そうかな……」
「それにほっといたらまた前みたいに痛くなるよ?」
「それ言うなって」
前みたいな治療が怖いから行けてないのに。
おれは重い足取りで家まで帰った。