高校時代の同級生、早瀬が俺の働く歯科医院に偶然患者としてやってきたのが4ヶ月ほど前。もっと嫌がるかと思っていた彼は意外なことにおとなしく通院してきて、治療もとうに一段落しており、そろそろ次の検診をしようかという時期だった。
再会をきっかけに早瀬から誘われてなんとなく食事や飲みに行くようになって、今日もお互い仕事が終わった後、二人で居酒屋にいる。
飲み、とは言っても、早瀬は意外と酒に弱いらしく、決まって1杯だけ飲む。一度だけ2杯飲んで見事に酔い、「他の友達だったらみんなに合わせて少し無理して飲んだりするけど、なんとなく柊崎には気を遣わなくていいんだよね」とそんなことをこぼしていた。
俺は俺で早瀬には構わずいつも一人で飲み続けている。サシ飲みでもう一人が飲まないと普通は気になるものだが、彼なら気を遣わなくてよいという点では俺も早瀬と同意見だった。
お互いのコンプレックスを共有しているから、俺たちは気楽に付き合えるのかもしれない。
大量の虫歯持ちで歯医者が嫌い。そんな唯一の、かつ、ろくでもない共通点しかない俺と早瀬。
高校2年のとき、一度だけ同じクラスになったときは性格もつるんでいる仲間も全く違ってほぼ接点はなく、俺はクラスの中心にいた彼のことを苦手とすら思っていたが、思いがけず彼の秘密、つまりは俺との共通点を知ってしまい、それから妙な仲間意識は持っていた。