とても長く感じられた治療が終わり、診察台が起こされた。
うがいをしてから、芳野先生に治療後の説明を受ける。
右下の歯にはもう強い痛みはない。ただ、鈍い痛みは残っていた。それが本当に痛いのか、痛かった治療の感覚を覚えているだけなのかは分からない。
そして心もずんと重かった。虫歯を放置した私が悪かったのに、泣き喚いて口を閉じたり動いたり、ひどい失態だ。
「お疲れ様。また来週な」
「……はい」
来週は今日の治療の続きをするそうだ。
来なきゃいけないのは分かってる。もう同じ失敗はしたくない。来たいと思ってる。
でも、私はちゃんと来られるかな。あの治療を次は我慢できるのかな。不安は尽きない。
診察台を降り、鞄を取って歩き出そうとすると、「和瑚ちゃん」と先生の声。でも、今の私は先生の顔を見ることができなかった。
「ありがとうございました」
鞄を抱え、頭を下げて逃げるように診察室を出た。