6 - 1/7

「先生ありがとうございました。楽になりましたよ」

 西矢が1日の最後に担当したのは、仕事帰りのサラリーマンだった。先週の初診時は歯が痛いと沈んだ様子で診療室に入って来た彼。インレーをセットした今日は、あの日とはうってかわって晴れやかな表情をしていた。

「よかったです。お疲れ様でした」

 西矢が微笑むと、「ほんと助かりました」と彼は笑みを深める。温かさと、少しの寂しさが西矢の胸の内に広がった。

(浅賀先生にも、こんな顔をしてほしかったな)

 笑顔のまま帰って行く患者を見送り、診療室に一人きりになると西矢は肩を落とした。