「先生ありがとうございました。楽になりましたよ」
西矢が1日の最後に担当したのは、仕事帰りのサラリーマンだった。先週の初診時は歯が痛いと沈んだ様子で診療室に入って来た彼。インレーをセットした今日は、あの日とはうってかわって晴れやかな表情をしていた。
「よかったです。お疲れ様でした」
西矢が微笑むと、「ほんと助かりました」と彼は笑みを深める。温かさと、少しの寂しさが西矢の胸の内に広がった。
(浅賀先生にも、こんな顔をしてほしかったな)
笑顔のまま帰って行く患者を見送り、診療室に一人きりになると西矢は肩を落とした。