「せんせー、おはようございまーす!」
「おはようございます、香椎先生」
「おはよう、ひなちゃん。千秋さんもおはようございます」
今日も元気に登園してきた、私の担当クラスのひなちゃんと、その叔父さんの千秋さん。
叔父さんとはいってもまだ30歳前後に見える千秋さんは、ひなちゃんのお母さんの弟さんで、時々保育園への送り迎えを担当している。
ひなちゃんは園内に入るなり駆け寄って来て私の足にぴたっとくっつくと、千秋さんに向かって手を振った。
「じゃあね、しゅうくん。ばいばーい」
「え? いま着いたばっかりなのにひなちゃん冷たくない?」
「いーの。すみれせんせいとあそぶもん」
「はいはい。……用無しみたいなので僕もう行きますね、香椎先生」
「はい、いってらっしゃい」
千秋さんが苦笑しながら軽く会釈をして、門の外に出て行った。
千秋さんの職業は歯科医だ。この近くのクリニックで働いているのだと前にひなちゃんが教えてくれた。
歯医者さん、か。
そろそろ行かなきゃダメかな……。
高校生のころ治した左上の歯。そこに入っていた銀歯が取れたのはもうずいぶん前のことだった。
最初は特に痛みもなくて、いつか歯医者にいけばいいかと思って先延ばしにしていたのだけど、最近そこが疼くような気がする。
でも、ここを治療したときすごく痛かった。
それを思い出すとなかなか歯医者に行く勇気が出ないのだった。