日曜日の部活帰り、おれは道路の向こうから二人組の男の人が歩いてくるのに気づいた。
そのうちの一人、遠目に見ても目立つほどでかい人影はたしかに見覚えがあって、慌てておれは隣を歩いていた一馬の背後に隠れた。
「どうしたの、理玖」
「ちょっとだけ隠して」
一馬は最初首を傾げたけど、前から歩いてくる人物に気づくと納得したようにああ、と声をあげた。
察しのいい幼なじみは嫌いだ……いや、この場合はありがたいか。おれは一馬の後ろで背中を丸め下を向いて歩きながら、夏兄とその隣にいる友達らしい男の人とすれ違う。
よかった、気づかれてない、と思った瞬間だった。一馬の声がした。
「夏己くん」
は? ばかばかばか、なにやってんだよ一馬! 声かけたりしたら気づかれるだろ!
おれは慌てて一馬の横をすり抜けて夏兄に背を向ける。
「お、一馬。部活帰りか?」
「うん」
「お疲れ」
背中でそんな声を聞きながら早く話し終わってくれと思っていると、一緒に歩いていた友達の一人が「この人どっかで見たことある」と言い出した。
「歯科健診に来てくれた歯医者さんだよ」
一馬がそう言うと、「あ〜」と声があがった。
「そういえばそうかも!」
「めちゃくちゃでかい人いるなって思ってた」
「はは、覚えててくれてありがとな。こっちの先生も一緒に行ってたんだけど覚えてるか?」
やばい。なんか話が盛り上がってきた。ていうかもう一人も歯医者さんかよ。
一人だけ背中を向けているのも不自然だから顔はあまり上げないようにしたまま体だけみんなのほうに向ける。
絶対気づかれるだろ、これ……。
手のひらが汗ばんできて、無意識のうちに握りしめていたことに気づく。これほど夏兄に会いたくないのにはわけがあった。